Chairman

会長就任のご挨拶 ―躍進へ!―

梶川 武信(湘南工科大学名誉教授)

第3期(2008.7―2010.6)の日本熱電学会会長に選出されました梶川武信でございます。日本熱電学会を代表し、私の所信の一端を述べ、皆様への会長メッセージとさせていただきたいと思います。

皆様におかれましては、日々、それぞれの分野において、益々ご活躍のこととお慶び申し上げます。

日本熱電学会は、お蔭をもちまして、平成20年度に創立5周年を迎えることができました。会員は、正会員、助成会員(維持会員、賛助会員)、学生会員を合わせ、総数300名有余となっています。

日本熱電学会は、熱電に関わる基礎科学分野から工学・応用分野、更には企画・経営的な分野など、「熱電」をキーワードとするすべてを包含している学会で、いわば一つの専門分野に特化し、且つ総合的な領域に亘る学会となっています。熱電への関わり方は各人各様であっても、われわれ共通の願いは、「熱電」* が、世のため、人のために役に立つように、右肩あがりに盛んになってほしいということではないでしょうか。

学会は、“この願い”を、出来るだけ効率的に且つ速やかに達成したいという共通の目標をもった方々の集まりであると思います。そのため、会員間相互の交流や熱電に関連した情報の受信と発信の環境を支援することが、学会の主な役割であると考えています。同時に、学会から社会への情報発信や熱電技術を通じての啓蒙や普及活動などで地球環境保全といった社会貢献にも及んでいければ、すばらしい学会になるのではと思います。

近年、熱電を取り巻く環境は10数年前と比べ大きく変化しました。ニーズ面から言えば、地球環境問題解決の鍵を握る革新技術の一つとして、また、各エネルギー部門からの排熱を有用な国産エネルギー源に変身させ、その場で電力に変換できる革新的エネルギー技術として大いに期待され、出来るだけ速やかな実用化・事業化により社会で役立ってほしいという要請が一層強くなっていると思います。一方では、熱電を一般社会で広く使おうという機運が高まってきたことによって、稀少元素資源確保や安全性などの課題にも答えていくことが必要になってきています。

高性能化・高機能化を実現するブレーク・スルーのシーズについては、材料基礎科学の進展とナノ・テクノロジーを駆使できる技術環境の成熟によって、大きな可能性が拓けてきています。10数年前には、無次元性能指数ZTが1.0を超える材料はきわめて限定されていましたが、近年、多くの材料系にその可能性があることが実験的にも立証されています。

熱電への従来の効率が低いというイメージを完全に払拭することが出来たことは、この10年の大きな成果であり、先人の努力から得た財産であると思っています。江崎玲於奈氏がアイザック・ニュートンの言葉として、「私が誰よりも遠くを見ることができたとするならば、それは何としても巨人たちの肩の上に立ったからだ」と、以前紹介されておられました。この意味を解説するまでもないのですが、科学技術の進歩は、駅伝のようにそれぞれのバトンを引き継ぎ、渡すことによって達成されるものと思います。今年の最大のビッグニュースと言ってもいい、4名のノーベル賞授賞者が日本から選ばれました。そのお一人である下村脩博士は、「根気強く一つひとつの壁を突き破り続けたのが今回の結果につながった」といわれておられますが、授章者の方々は共通して、「とにかく自分の信じたものを粘り強く続けること」を実践された結果であるように思います。熱電に関わる我々も、熱電の未来を担う気概を持ち、それぞれの「熱電」を十分粘り強く究めていこうではありませんか。

日本熱電学会の主役は、学会の会員です。その組織は、正会員、助成会員、学生会員から構成されています。正会員と助成会員全員からなる総会は学会の方針、事業活動、予算などすべてを決定するところです。それを支えて、理事会(約40名)、評議員会(約40名)があり、諮問機関的に顧問会があります。また、学会の円滑な運営のために、会長、副会長、総務理事、会計理事、各種委員会委員長及び監事並びに、事務局があります。組織は固定されたものではなく、時代と共に、また、会員の皆様の要望に応えられるよう、適宜、改組転換を図っていく柔軟な組織でありたいと思います。 学会としては小所帯ですが、小さい故の機動力を活用し、学会活力を持続できる学会にしたいと思います。その意味で、会員になっていただいた方には、学会からの情報発信を受け取るという受動的ばかりではなく、学会の場を自ら活用していくという能動的な考え方や学会から社会への積極的な情報発信など積極的な考えに立っていただきたいと思います。学会の活動として、学術講演会(年1回、展示会有り)、研究会(年数回)、欧文論文誌(特集号を年1回)、学会誌(年3回)や講習会などの機会を作っています。これからはホームページを更に充実させていきたいと考えています。

「熱電」文化を醸成し、その中から新しい文化の芽が生まれ、育まれ、伝承される。既存の熱電文化を突き破ろうとする世代間の葛藤やそれぞれの異文化の衝突と融合の場を学会は提供していく。“熱あるところ熱電あり”の基本コンセプトから出発し、熱電に対する新しい価値観、人間観をそこから嗅ぎ取り、“種”を創製して発展させ、社会にインパクトを与える核となるような活力あふれた集団でありたい・・・

是非とも自分達の学会を、自分達の手で、自分達のために、役に立つ組織体にし、共に躍進を遂げようではありませんか!

*「熱電」とは: ゼーベック効果を用いた熱電発電、ペルチェ効果を用いた熱電冷却、アルカリ温度差電池(AMTEC)、熱電子発電、熱電効果によるセンサ・アクチュエータ等の各種応用分野、熱磁気効果による素子、熱電関連伝熱・蓄熱・熱輸送技術や各種マクロからナノにいたる計測評価技術、更には、熱電マーケッティングやLCA(ライフサイクルアセスメント)やエクセルギ解析などの関連のシステムアナリシスを含むものです。しかし、時と共にその定義が変化することは大いに歓迎したいと思います。